sinkope is not kind of paradoxical existence

🎼 🎹 🏀 🌠 🚶 👣 📷 💻 🎨 🎮 📖 and more !

ミッシェル・ゴンドリー、スパイク・ジョーンズ、クリス・カニンガム

例のPV集なDVD、発売直後に買って堪能してたんですが、最近友人に貸してたのが返却されてきましてん。
いい機会なので、購入直後に書いた感想を再掲しておく。


ミュージック・ビデオ、プロモーション・ビデオ、ビデオ・クリップ、まぁ色々呼び名はあるけど、そういう映像作品を監督別に特集したDVDがジェネオンから発売されたので、早速ゲット。特にゴンドリーは非常に楽しみだったが、期待を上回るものだった。
各DVDの収録曲目はこの辺を参考に。


いやホント、ミシェル・ゴンドリーは秀逸。この人の特徴は、「発想のすごさ」「音楽にノせた動き」「ワンショットで魅せる」って感じでしょうか。
収録作品いっぱいあるんですが、ワシ的にベストを挙げると、次のような感じ(下に行くほどブッタマげ度高し)。

THE ROLLING STONES 「Like A Rolling Stone」
GAPのTVCFにあったような「時間凍結してカメラが回り込む」という手法を使ったヤツ(「マトリックス」はそれを動かしたのがミソだったよね)。人物周囲の背景をウニョウニョ動かしいて、正直見ててちょっと疲れる(笑)。内容も若干アンニュイ。でも斬新。
LUCAS 「Lucas With The Lid Off」
恐らくスタジオ内にセットを組んで、ワンショットで撮った作品。色んなパーツが絶妙に組み合わさって、LUCASの連中がタイミングよくセット内を移動すると、空間がトんでいるような錯覚が起きる。映写機を効果的に使っているのもミソ。まーとにかく、よく考えつくな、タイミングよく撮るな、と。映写機を効果的に使ってるといえば、「Dead Leaves & The Dirty Ground」もスゴい。
THE WHITE STRIPES 「The Hardest Button To Button」
ドラムの彼女がキックを打つ度に、ドラムセットが増えていって、ドラマーが移動していくという(笑)。曲の出出しは4分音符でキックを打つので一定の間隔でドラムセットが画面の中を増えて行くんだけど、途中から「どっどっどどどっ」となる時は8分の刻みもちゃんと増えているトコが芸が細かい。ギターの方も同じタイミングで‥‥アンプが増えていく(笑)。これ、今だったらCG使って増やしていってとか考えるんだけど、ゴンドリーの場合は「じゃあドラムセット32個用意して、増えたところからカット繋げよう」とかアナログ的にやっちゃうんですね(もちろん意図的に)。すげー笑った。
BJORK 「Hyperballad」
ビョークが顔前半分埋まってるのと、電子基盤みたいのと、映写機で投影された唄ってるビョークと‥‥が合成されて、前後左右に同期して動く。あー、なんか文章で伝えにくいけど、とにかく美しい。すごいアナログチックというかローテクっぽい絵なのだけど、LEDの光なんかがとにかく美しく瞬く。ま、これは曲も素晴らしいのだけど。
DAFT PUNK 「Around The World」
ダフト・パンクはどうしてもこう松本零士のアレが‥‥(笑)。ま、それはさておき、こちらは初期作品の代表作。室内セットで踊り子さん達が踊ってる。ただそんだけ。ただ、なんかこう振り付けがダンス系PVと全然違うのですね。まずダンサーの姿なんですが、ミイラとか巨人子供とか宇宙人とか骨男とか‥‥。で、曲に合わせて踊るんですけど、例えばミイラは4人が中央に陣取って、ドラムに合わせて動くんですわ。巨人子供はベース。フレーズの上下に合わせて階段を昇降するという(笑)。他のグループも、楽器毎のフレーズに合わせた動作をする。なんともコミカル、そして音楽的! で、良く見てるとコレ、倍速で動いているような。多分半分のテンポで踊って倍速にしてるんだろうなぁ。それで動きが一層面白くなってるのねん。
CIBO MATTO 「Sugar Water」
日本が誇るチボマットのお二人。画面は横に2分割されて、二人がまずベッドから起き上がる。各々自分の部屋っぽいところにいて、場所は違うけど同じような動作を画面の左右でしているのね。でも、片方の動きがどうもオカシイ。よく見ると、片方だけ逆回転になっているのね。シャワーを浴びて、服を着替え、外で出て行く。タイミングはほとんど一緒だけど、片方は逆回し。ふんふん、なるほどね、と思って観てると、中間地点で思わぬドンデン返し(文字通り)が! 二人は路上でクルマとスクーターの衝突事故を起こし、画面が途中で左右に入れ替わるのね。こんどはもう一人が逆回転側の方になり、さっきまでやってきた事を逆回転していくワケよ。逆回転だった方は正常回しとなって、進んでいくのね。各動作のタイミングは相変わらず合ったまま(逆回ししただけなので当たり前ですな)。で、最後に最初に戻ってend、と。あとで気付いた。これワンショットで撮ってるじゃん、失敗許されないじゃん。すげー。途中で黒猫が画面の左右を「跨ぐ」とか、細かいトコロも凝っている。歌詞にもオーバーラップしていたり、見事な作り。
THE CHEMICAL BROTHERS 「Star Guitar」
電車から見た窓外の風景が流れていくです。そんだけ。‥‥そんだけなんだけど、音楽に合わせて風景内のオブジェクトが通り過ぎて行くのですよ。キックに合わせて同じ形の小屋がタイミング合わせて横切っていき、メロディーに合わせて反対方向の電車が通り過ぎたり。もちろん現実の風景じゃ有り得ないので、CGで作るか撮影済みのパーツを編集するかしかないのだろうけど、いやま、よくそんなコト考え付くなぁ、と。ケミブラの音楽もとても良いので、何度観てても飽きないっす。
THE WHITE STRIPES 「Fell In Love With A Girl」
これ、DVDのジャケットにも使われています。レゴです。レゴでコマ撮りアニメーションしてます(爆)。すげー。ただただ、すげー。ちゃんと薄目で見ると動作がちゃんとしてるんですよ(少々ネタバレすると、ムービーで撮った素材を元にピクセル的な原画(?)を作るところまではやったらしい。ただし、レゴは実物)。なんか撮影に2ヶ月かかったそうで(笑)。
THE CHEMICAL BROTHERS 「Let Forever Be」
ビデオ編集で、画面が分割されていくようなエフェクト(万華鏡みたい、と言えばいいか)が結構昔からありますが、それを逆手に取った作品。これはもう観ていただくしかない。ブっ飛んだ。曲もまた良し。
KYLIE MINOGUE 「Come Into My World」
ワシが初めてゴンドリーを知ったのはこの作品。そして今でもブっ飛び度No.1。カイリーは唄いながら街の中を歩きます。5叉路の交差点を中心に、周回している感じかな。合計4周するのですが。出出しでカイリー姉さんはクリーニング屋みたいなところから出てきて、すぐに袋を落とすのですね。でも構わずに唄いながら歩く。街には遊んでいる少年やケンカして窓からモノを捨ててるカップルやラブラブな恋人や駐車違反と取り締まる婦人警官や‥‥まぁそんな背景。で、またさっきのクリーニング屋の前に戻る、その直前。‥‥と!ドアからカイリーが出て来て、袋を落とすのですわ。1周回ってきた方のカイリーは袋を拾い、さきほど出て来たカイリー(1周目の動作をしている)とつかず離れず横を歩きながら唄うのですね。でスタート地点に戻ると、またカイリーが出てきて‥‥と、まぁ、そんなビデオ。最終的にカイリーは4人に増殖して唄うことになるです(終了直前に5人になる)。しかもですよ、増えるのはカイリーだけじゃなく、周りの登場人物も増えているんですわ! ぐはーっ! んで、よく考えるとスゴイことをやってるワケです、このPV。だって最初に出て来たカイリーは、シームレスにワンショットで4周してるわけだ。その間、後から出て来たカイリーと立ち位置を変えながら歩いているのに、カイリー同士が不自然に重なったりしないのね。もちろん背景の増殖脇役達も。カイリーはブラブラ唄いながら歩いているように見えるけど、(恐らくモーションコントロールされたカメラと共に)綿密に計算された場所を歩いていかないとイカンわけだ。脇役はもっと大変なハズ。何度ビデオを見返しても、破綻していない。どうやってんだーっ?! あと気付いたんですけど、これ曲の構成的に「A→A’→B→B’、を4回繰り返す」となっているところが、このPVを成り立たせる元になっているんですねぇ(じゃないと、周回ごとにカイリーの口が全然合わなくなっちゃう)。いやはや、もう腰抜けました。

その他、ビョークはゴンドリーの名を知らしめた「Human Behavior」を始め全部で5曲、他にも過去のほのぼのとしたPV作品や、ショートフィルムやらインタビューも入ってて、超お買い得。ええ買い物した。


スパイク・ジョーンズは「マルコビッチの穴」で映画監督としても今や名声を博していますが、PVもなかなか良いですね。ゴンドリーが「発想」の人なら、スパイクは「物語」の人でしょうか。
いくつか気にいったのを順不同で紹介すると、

WAX 「California」
火のついた男が疾走する姿をスローモーションで。エネルギッシュというか、アメリカっぽいですね。MTVじゃ放映を渋られたそうですけど。CGじゃなくて、ホントに火ぃつけて走るんだもん。
THE PHARCYDEDrop
逆回転ネタ。でもラッパーの口の動きが合っているのがミソ。で、どうやったかというと‥‥言語学者の人に逆回転な発音を別の単語に置き換えて、メンバーは一所懸命覚えたそうな(笑)。
DAFT PUNK 「Da Funk」
ある男のがある街へ引っ越した後の一夜の風景。その男の頭部が犬の形をしてるんですが。シュールだなぁ。ブックレットにあるように「これ見るとマルコビッチの穴を連想」するかどうはチト微妙。
FATBOY SLIM 「Praise You」
ちょっと見た目シロートっぽいダンス集団が、繁華街でラジカセで鳴らす「Praise You」に合わせて踊るのを、ゲリラ撮影した、という作品。踊りもさることながら、周りの反応が面白い。というかですね、この作品は2枚目の特典ディスクに収められているドキュメンタリーを併せて観るべきです。登場した彼らダンス集団は、なんとMTVアワードにノミネートされ、会場で踊ってくれって招待されるんですが、その舞い上がりっぷりを含めてもう素晴らしい。入賞するかどうかなんて、問題じゃないくらい。(^^;
THE NOTORIOUS B.I.G. 「Sky's The Limit」
ラッパー二人を含め、登場人物を全て子役に置き換えて作ったPV。ワシ的には「ああ、向こうの子供はなんて色っぺェんだチキショー」と思いますた。(^^;;;
FATBOY SLIM 「Weapon Of Choice」
俳優のクリスファー・ウォーケン(おじさん)が‥‥踊る!(笑

ケミカルブラザーズのやつでソフィア・コッポラが体操してるヤツは、まぁ触れないでおいてあげましょうや(ぇ


クリス・カニンガムは、なんつーかこう映像美を追求するのはわかるんだけど‥‥ちょっち暗すぎっすよ。ちゅうかなんでオジサン顔やねん、と。マドンナとビョークのは良かったかなぁ。